
去年2月に、このブログで「ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)を連続測定できるセンサー」をご紹介しました。
血糖を連続測定するリブレのケトン版のようなデバイスです。
もちろん、測定しているのは血液ではなく間質液です。そのため血液検査と全く同じ値になるとは考えられませんが、多少の誤差があってもケトンの増減という「トレンド」が把握できれば面白いのではないかと思ったのを覚えています。
以前はAmazonでも購入できましたが、現在はAmazonでは見かけなくなりました。メーカー(あるいは代理店)のウェブサイトから直接購入する形になっているようです。

ただ、私自身は現時点で実際に注文していませんので、日本から問題なく購入できるかどうかまでは確認できていません。
また、このセンサーは糖尿病管理を目的とした製品ではありません。ケトジェニックダイエット(ケトンダイエット)を実践している人が、自身のケトン状態を把握するために利用されているようです。人向け製品であり、Not for Medical Use(医療目的での使用を想定したものではなく)、猫での精度や有用性も検証されていません。
当時、飼い主様のご協力のもと、糖尿病性ケトアシドーシスから回復した猫に1日だけ装着を試させていただいたことがありました。

ケトン値は終始0のままでしたが、少なくとも猫でも装着・測定自体は可能でした。

そんなことを思い出しながら、「もし普通に猫の診療で使うとしたら、どんな場面があるだろう?」と改めて考えてみました。
当然、最初に考えるのが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の治療です。
しかし、よく考えてみると、私はDKA急性期ではそれほど必要性は高くないように感じています。
ケトンについては、リブレを用いて1~2日に1回程度測定すれば、多くの場合は十分に治療方針を判断できます、この場合は都度採血が必要ですが。

また利用するにしても、リブレとケトンセンサーの2枚を装着する必要があり、猫ちゃんへの負担を考えると現実的ではないかなと思います。
では、どんな場面なら役立つ可能性があるのでしょうか。

現時点で私が思いつくのは、SGLT2阻害薬を導入するタイミングです。
SGLT2阻害薬は血糖を下げることはできますが、インスリンのように細胞へ糖を取り込ませる作用はありません。そのため、インスリン不足の状態では体はエネルギー源として脂肪を分解するようになり、ケトン体が増加しやすくなります。
人では、SGLT2阻害薬の使用中に血糖値がそれほど高くなくても発症する「正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス(euglycemic DKA)」が知られています。
そのため、患者さん自身が「気分が悪い」「吐き気がある」「食欲がない」といった「自覚症状」をきっかけにケトン体を測定することがあります。
一方、猫は「自覚症状」を訴えることができません。
もし今後、猫でもこうした薬剤を使用する機会がさらに増えるのであれば、正常血糖DKAを見逃さないために、導入初期だけでもケトンの変化を連続的に把握するという使い方には、何らかの意義があるのかもしれません。
もちろん、これは現時点での私の仮説です。本当に役立つかどうかは、今後の研究や臨床経験を待つ必要があります。
リブレも最初は人医療のために開発されたデバイスでした。その後、多くの検証や経験の積み重ねによって、現在では猫の糖尿病診療でも広く利用されるようになっています。
この連続ケトンセンサーも、将来、獣医療で新しい役割を担うのか、それとも限られた用途にとどまるのか。
現時点では仮説に過ぎませんが、今後の研究や臨床経験の積み重ねによって、その有用性が明らかになることを期待しています。
※本記事は新しい技術についての考察です。ご紹介したセンサーは人向け製品であり、猫での精度や有用性は現時点で確立されておらず、臨床使用を推奨するものではありません。



























